『山の音』~川端作品の味わい深さ

久々に川端作品を読んだ。 中学の夏休みの宿題以来 (笑)
歳を重ねてわかる、川端康成の味わいに、いまさらながら気がついた。

主人公は鎌倉の山手に住む。 60過ぎ結核を患っている。
「蝉が止まったか・・・木の葉へ夜露が落ちるらしい音も聞こえる・・・そうしてふと信吾に山の音が聞こえた。 廊下の下のしだの葉も動いていない・・・遠い風の音に似ているが、地鳴りとでもいう深い底力があった。」
主人公は音が止んだ後で、死期を告知されたかと寒気がしたとある。
夜露が落ちるなどの音の表現、遠くから足元へ動く距離感、「深い」や「遠い」などの形容詞の使い分け、など
日本語の美しさ。
女性の美しさの表現も秀逸、「細く長めの首の線が綺麗なのは・・・ほどよく離れてねそべった目の角度がひとしを美しく見せるのだろうか。秋の光線もいいのかもしれない。」
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「山の音」という序章はこんな感じのプロローグで始まる。
出戻りの娘、結婚した後に堕落した息子、表には出さないが悩む息子の妻。
息子の妻への淡い恋心に彼女もこたえ、しだいに思いを深めていく様が、直接的にではなく、“川端”らしく繊細な風景や心象心理を遠隔で描くことで描写されている。
年老いて「死」が目の前に現れると、生きるという渇望があれば、それが「恋」などという、若い頃のような境地にいたるのだろうか・・・
久々で素敵な純文学で、心洗われる思い。

さて、夜の「山の音」はたしかに怖い。
昼は別の音の消されて聞こえない音、風が吹けば樹木のギギといる軋み、誰が鳴らすのか葉っぱが触れ合う音も不気味だ。
聞く人の心象心理がそうさせるのだが、最大の理由は漆黒の闇が、周囲を見えなくすることが、それを助長することは間違いないだろう。

時々、裏山で下山中、日が暮れ、真っ暗になる直前だ・・・ふっと立ち止まって自分の足音も聞こえなくなった時がなにやら一番怖い、背後から横の闇からなにかの気配を感じてしまい、背筋がぞっとするのは私だけだろうか。


山の音 (角川文庫)
KADOKAWA
2017-10-25
川端 康成

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この記事へのコメント

2018年09月21日 11:30
こんにちは。ご無沙汰しています。
情景描写が少なくなっているように感じられる最近の小説から思えば、川端作品って素晴らしいと思うのですが、若い頃はこの作品を読みたいと思わなかったんです。しかし、最近では理解できなかった内容が理解できるようになり(大人に成長したのでしょうか?)読んでみたいと思います。

山の音と言えば。
たくさんの登山経験があるわけではないのですが…。
家族で山に入ると後方を歩くのですが、どうしても怖くて振り返り、振り返り登った山が常念山脈の南端にある大滝山です。冷沢登山口から入ったのですが何故か怖かったんです。音が何も聞こえないというのが本当に怖いんですね。


本読みと山歩き
2018年09月22日 08:11
yu-ariさんへ お久しぶりです。
私と同じで時々、お山をあるかれているようで、うれしい限りです。
この先生の晩年の作ですが、完成は56歳の時のようです。
年齢を重ねれば経験も積み重なり…先生の言葉にも含蓄があることに気が付きます。
今、この先生の本を読み返すのも面白いかもしれません。
 山では、最後方がしんがりで、安全や進行をみる大切なポジションですね! でも後ろがいないのも事実、特に夕刻から日が沈むころは怖いですよね。
大滝山ですか~~ なにかあるのでしょうか? はたまた、ご自身の心象心理が影響しているのでしょうか? そんなことも考察すると、それはそれで面白く(笑)