本読みと山歩き

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zoom RSS 『春を背負って』〜山岳小説の新境地

<<   作成日時 : 2014/04/13 18:03   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 18

山岳小説というと、おおむね下のどれかに当てはままる。

  ・ハードコアなドキュメンタリー風
  ・男一匹 一人旅風
  ・さわやかなエッセイ風
  ・事件の起こるミステリー風
  ・山小屋のご主人の体験風

この小説は、少し今迄とは違うのです。
主な登場人物は、3人
一人は小屋の主人で、最先端の技術屋だったが、夢破れ、親父が開拓した山小屋を継いだ 「長嶺亨」
一人は、その「親父」の親友で、会社経営まで果たしたが今はホームレス 「ゴロさん」
一人は、自殺願望のOL 「美由紀」
それぞれは、下界の生活に疲れ、この山小屋を共同で運営していくことになります。
大自然は、
彼ら彼女らを包みこみ、山小屋に訪れる 様々な人々を助け助られながら、そんな行いを通じて、悩める人々を癒してくれます。
いわば、“心癒される人間模様を描く山岳小説”とでも呼ぶ分野!?でしょうか。

山では“素の自分”になるような気がします。 テントを担いで歩く、急坂をはあはあ喘ぎながら歩いていると、そうそう猫をかぶった自分でいることができません。
でも、山や山歩きを愛する人にそういじわるな人を見たことがない。“素”というか、人の本来の良さが引き出される環境なのではないかと思います。
この小説を読んでいると、そんな思いに捕らわれます。

共感できる台詞がありました。 亨とゴロさんの会話、道学者の講釈みたいと照れながら語ります。
 「夢と(世間にたくさんある)欲とはどう違うのだろう」
 「欲は欲しいものを楽して手に入れようとするもの」
 「夢は・・・手に入れる為に労をいとわない、むしろそのための苦労そのものが人生の喜びであるような・・・」
 「人生で大事なのは、山登りと同じで、自分の二本の脚でどこまで歩けるか、自分自身に問うことじゃないか
  自分の足で歩いた距離だけ本物の宝にななるんだよ・・・」
 「勝った負けたの世界から得られるものなんて束の間の幻にすぎないわけだ」

最近、山をそう頻度多く歩かなくなりましたが、それでも山頂で展望を楽しみ、自分が歩いてきた稜線を眺めながら、
 「(それなりの高度差を)一歩一歩、自分が歩いてた、その積み重ねにこの山頂があるんだな〜
  一歩欠けても、この山頂にはたどりつかないんだ」
と思うことがあります。 “自分の足で歩いた距離だけ、宝になる”に通じるものがあるます。
自分の人生を確認しながら、山を歩いているとはいいません。 が、やはり山を通じて人生を振り返ることはできるわけです。

この小説は、映画化され、6月14日に東宝系で公開されます。
亨は松山ケンイチ、ゴロさんは豊川悦司、美由紀は蒼井優、監督・撮影は木村大作さん。
小説の舞台は、奥秩父ですが、映画では立山連邦に変更されており、物語とともに、山岳映像も美しいことでしょう。 公開の日が楽しみです。


春を背負って (文春文庫)
文藝春秋
2014-03-07
笹本 稜平

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コメント(18件)

内 容 ニックネーム/日時
これは観なくちゃ!(^_^)
KURI
2014/04/13 20:34
こんばんは。
面白そうな小説です。
映画は見に行こうと思います。悩むのは、小説を先に読むか否かです。新田次郎なら先に小説を読みますが、今回は映画を先に見ようかと思います。
カスミッシモ
2014/04/13 20:50
KURIさんへ
本の映画化でいえば、「岳」以来です。観なくちゃ!(笑)
本読みと山歩き
2014/04/13 21:31
カスミッシモさんへ
悩み何処ろですね。小説を読みと、自分の世界が出来てしまうので、それを裏切られかもしれず…
小説にはいろんな物語がありましたが、あれをぜんぶ丁寧に映画にするのは難しいと思われます。 
映画を先に見て、興味が湧いたら小説を読みのが正解かもしれません。
本読みと山歩き
2014/04/13 21:37
「点の記」の映画も面白かったので、この映画も見てみたいです。ただ、気になるのは、舞台を奥秩父から立山連峰に変えたことです。その方が、絵になる風景が広がっていることは確かですが。樹林帯の中を黙々と歩く奥秩父なら、歩いているうちに内省的な気分になりますが、立山連峰なら周囲の風景に圧倒されて、人生のことなんか忘れてしまうと思うのですが。
さすらい人
2014/04/13 21:45
さすらい人さんへ
なるほど、そんな見方もありますね。
この小屋の周辺の見どころは、シャクナゲの大群落という設定なのですが、立山の場合はどう設定するのかな〜 森林限界を超えたところにはないし…
風景は圧倒的でしょうから、物語もダイナミックなものに変えているのかもしれません。
楽しみです。
本読みと山歩き
2014/04/13 21:57
前も思ったのですが、「山岳小説」っていうカテゴリーって一般的に存在するものなのですか?
あつこ
2014/04/14 05:02
あつこさんへ
一般的に存在はしますが、文学界で存在するかどうかは疑問です。
場所が山であれば、なんでも“山岳小説”になってしまうからです。また、それを書く人も少ないのです。
新田次郎さんが有名な作家で、「新田次郎文学賞」なるものがありますが、ノンフィクションや自然を題材とした作品が対象のようです。
日本は70%が山地ですから、山岳小説という正式分野が出来てもよさそうなものですが…(笑)
本読みと山歩き
2014/04/14 06:25
今晩は。
この本は昨年に読みましたが、ゴロさんの言葉はじんと来ますね。映画は立山が絵になるのでしょうが、やはり奥秩父あたりのほうが良かったと思います。6月始めの甲武信や十文字峠の石楠花の頃はなかなか他所では見られない景色です。梓小屋なんて本当にあるのかと調べて見たりしました。この人の本は他に「尾根に渡る風」や「駐在刑事」なども読みましたが。こちらは奥秩父では無く奥多摩が舞台でした。こちらの本も良かったですよ。
インレッド
2014/04/14 21:19
<人生だって 同じようなものです。
 夢を追っかけて 自分の脚で一歩一歩 
 山に登っているようなものです。
 豊かな生活ってのは、心の問題です。
 物や金を沢山持っていたって・・・可愛そうな人もいる。 
 何時かお釈迦になる日を目指して 
 突き進まねば面白くない。>・・・なんて
誰かが言ってたような気がします。

人生とは、重い荷をしょって登るがごとしでしょう。 
ログの大好きな徳さん
2014/04/16 11:15
こんばんは。
題名からして、今までの山岳小説とは趣きの違いが
ありそうですね。
まだ読んでいませんが、あらすじを伺うと、私も奥秩父が
ふさわしく思います。
奥秩父の渓も深く、森も濃く、確かに内省的になりますね。
苔むす山道を辿れば甲武信小屋のシャクナゲの大群落と、
ヒゲの主が迎えてくれます(くれました)。
な〜んて、本も読んでいないくせにゴメンナサイ!
もちろん、すぐ読みますね。
Tao
2014/04/16 22:58
インレッドさんへ
ゴロさんは年の功か(その設定ですが)いうことに含蓄があります。
十文字峠の石楠花は有名らしいですね〜 こんな本を読むと行きたくなります。
他の本も読んでみます。
本読みと山歩き
2014/04/19 08:43
ログの大好きな徳さんへ
“心の問題”まさに、そうです。徳さんがおっしゃると含蓄があるな〜
“重い荷をしょって登る”… 
重いが軽くなる方法を日々さがしています。(笑)
本読みと山歩き
2014/04/19 08:48
Taoさんへ
皆さんのコメントを呼んでいると奥秩父は良い処のようですね。
ますます行って見たくなりました。
森が深いと、個人的には行きたい場所です。映像は撮りにくいでしょうが、ぜひ監督には場所を変えずに挑戦してほしかったです。
でも映画は見に行こうと思います。
本読みと山歩き
2014/04/19 08:52
こんばんは。
インレッドさんにお奨めの本をお尋ねしたら、この本を教えていただけて、昨日時にはドキドキしながら読み終えました。(*^^)v
(その前に、本読みさんのこの記事を読ませていただいてたのに、現代小説風に感じて、何気に読み流していましたm(__)m)
山岳小説?は山を歩いた人間にとっては山の景色や空気を思い出せて懐かしく、又行きたいなぁ〜という気持ちにさせてくれますよね。

映画化されるのですね・・豊川悦史のゴロさんはちょっと若いかな?な〜んて思ったのは、自分を基準にするからでしょうが、その割にはゴロさんのような含蓄のある言葉が言えないのが情けないですし、覚えておこうと思っても忘れてしまうのも情けない(+_+)
お母さん役の壇ふみは、私の中ではちょっと違う・・もっと肝っ玉母さん風だったし、立山もちょっと違うかな・・と思うので、先に本を読んでおいて良かったなぁ・・と思ったりしますが、楽しみな映画ができました。
夫が若い頃に山を知っていたら、絶対に山小屋が山岳警備みたいな仕事をしていたのに〜って、未だによく言うので、見たら又同じこという事でしょう(笑)
つれづれ
2014/05/27 22:33
つれづれさんへ  コメントありがとうございます!
ゴロさんはちょっと若い、同じ意見です。(笑)
お母さん役は、もうちょっと明るいイメージの女優さんがやるのかな〜と思ってました。
山小屋の管理番は今からでも遅くはありません!ぜひ旦那様に薦めておいてください。(笑)
楽しみな映画といえば、
「神去なあなあ日常」が「WoodJob」と銘打った映画で公開中です。
これも観に行きました〜〜 林業エンターテイメントとしては面白かったです。
本読みと山歩き
2014/05/31 10:40
昨日、映画「春を背負って」を観てきました。
山の映像も美しく、セリフも珠玉の言葉がいっぱいで、ただでさえ涙もろくなった私は途中からずっとポロポロと泣いていました。
よい映画を紹介してくださりありがとうごさいました。
KURI
2014/08/01 10:02
KURIさんへ
映画「点の記」で剱岳を見事に撮影した腕前ですから、さすがに山の撮影は見事でした。
私も同様に涙もろくなり、ハンカチなくしては映画はみれなくなってしまいました。(苦笑)
最後の二人の場面だけはちょっとひっかかりましたが…
山を舞台にした映画、とくに歩いたことがある山の映画は良いです。
自然回帰のこの時代、こんな映画が増えてくれることを期待しています!
本読みと山歩き
2014/08/02 18:54

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